Evena
書誌情報
Evena
- 著者
- 椎名誠
- 出版者
- 東京 : 文藝春秋社
- 出版年
- 2015
- ISBN
- 9784163901978
Shiina Makoto
更新
1944年、東京生まれ。東京写真大学中退。流通業界専門誌の編集長を経て作家業に入る。私小説、エッセイ、紀行文、SF小説など著作多数。目黒孝二らと本の雑誌社を設立し、月刊「本の雑誌」の編集長を務めていた。また作家以外にも映画監督、写真家としても活躍している。『犬の系譜』(1988)で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』(1990)で日本SF大賞受賞。小説作品は大まかに自伝要素の強い私小説系と、個性的SFや非日常的な小説等の超常小説系に分けられる。超常小説で描かれる世界観や生物観は独特。
舞台は近未来の中国大陸。象ノ口川第十八川床仮設道路を乗り合いの改造トラックに揺られ、吐水の町に降り立った男。彼の表向きの職業は、母水藻や鬼菱などの水生植物の買付人だったが、本当の目的は別のところにあるのだった...
背掻き猿飼育の仕事を失ってから失業中の男は、筋肉神経店の紹介で有限公司恭平臓器の仕事にありつくのだが、その内容は失踪したラクダを探し出すことだった。中国の生体攻撃で荒廃した土地を舞台にした冒険物。
銀天公社の人工月に照らされる荒廃した世界を舞台に繰り広げられる7つの話。毒々しい色合いに染まる妖しい商店街、降り続く濃厚な脂雨、腐臭漂う海に静止する人間型の水上歩行機。灰汁も登場。
「海賊でもやるか」。灰汁と可児と鼻裂の3人は、動物蛋白の腐敗ガスで動く古い砲艦に乗って海に出た。戦乱で荒れた世界を舞台にした海賊的冒険物語。
一群とともにパンツ一枚で走り出した男。背後には犬の群れが迫り来る。男が走り続ける理由とは?彼の運命は?若者の姿が見えない近未来の日本を舞台にSFタッチで描く。
落ち目の温泉旅館にやってきた小説家が風呂場で遭遇する不運を描いた表題作ほか、ワンアイデアの不条理もの、背筋が寒くなる系などいろいろ入った一冊。突然机の上に現れたメタルシルバーの極小物体との戦いを描いた「机上の戦闘」など。
超常小説ベストセレクション。超常小説の中から著者自らが選び出した傑作揃い。どんどん増え続ける「蚊」、男の口臭に人がバッタバッタと倒れていく「アルヒ…。」など。ひとつのアイデアでここまで話を展開できるすごさに脱帽。
SF三部作の舞台と同じく、ある最終戦争後の世界を描いたものと、日常に潜むアイデアを増幅させたものが収録されている。「突進」は目的方角を目指して障害を乗り越え、ただ男がひたすら走り続けるというワンアイデアもの。
1本だけ取り残された鉄塔は、白い雲を背に、ずかずかと歩き出していきそうだった。そんな鉄塔に魅入られた男を描いた表題作ほか、老齢化した自治会が強大な力を持ち始める「風雲欅台住宅」など、非条理、妖しい短編集。
全8編の短編小説集。表題作「中国の鳥人」は、商用で中国奥地に立ち寄った男が空を飛ぶ民族に出会うという話。「月下の騎馬清掃団」もおすすめ。主人公もかなり混乱、読む側も混乱。
地下鉄の通路を歩いていた5人は衝撃と共に地下に閉じ込められる。地上からの助けもなく、なんともへんてこな存在となってしまう彼ら... 「地下生活者」。海岸の砂浜にはまり込んだ車は、ずんずんと沈んでいく「遠灘鮫腹海岸」。
ボクス船長と盟友である歴史学者コロンバス氏は、4人の武装甲板員を連れて冒険の旅に出る。イラストレーターたむらしげる氏とのコラボレーション。
いろいろ入った短編集。盆戻りで1年ぶりに我が家に帰ってきたおふくろだが、一方でその息子の胃袋が思わぬこととなる表題作ほか、放置された車がずっと先まで並ぶ高架道に暮らす「ループ橋の人々」など。
北政府との戦争後の荒廃した世界で生きる人々を描く。文明の名残である壊れたビルディングを見て驚く人があれば、人が住む建物というものだよと教える人あり。油でギトギトになったもはや海とは呼べない海。そんな世界でも、淡々とながらも生きる喜びを感じる若者がいる。
『ねじのかいてん』収録の短編「水域」を長編へと展開したもの。水のあふれる世界を漂う男ハルの人生と冒険の物語。水没した高層ビルが所々に突き出し、流木が吸い寄せられてできる浮島がある。得体の知れない生物、植物。人に心を許すと裏切られることもある。素晴しい世界観。
父を探して兄弟が向かったのはマザーK市。そこは広告に支配された未来都市だった。さまよう奇怪な生物。この作品がつぼにはまれば、一気にシーナ・ワールドへ。SF三部作『水域』『武装島田倉庫』もあわせてどうぞ。
超常小説というよりはへんてこ小説か。三年B組金八先生をもじった「二年C組」、古典ポルノ見世物ランドで副業する会社員が衣装のウルトラマンスーツを脱げなくなる「パンツをはいたウルトラマン」、新人背後霊の話「背後霊だかんな。」など。
超常小説と私小説がまざった短編集。「蚊」はぶっちぎりでおもしろい。自己中男が焼きうどんを作りながらの延々と続く独り言「真実の焼うどん」、占いや風水が日常生活を支配する「よろこびの渦巻」。私小説では、幕張の海を見て若かりし頃を思い起こす「海をみにいく」、家の近くに住み着いた強力ニワトリの話「さすらいのデビルクック」など。
ぼおーん、ぼおーん。打器が打ち鳴らされるなか、妻が“お召し送り”されていく... 「いそしぎ」。島に漂着した男が海岸で見つけた小箱からはじまる「雨がやんだら」。「生還」の命がけの格闘技のような野球など。勢いとアイデアで勝ち。
超常物と小説物を含む短編小説集。「悶絶のエビフライライス」では、食堂で相席になった人たちが死闘(?)を繰り広げる。彼らの平然さは少しおかしい。迫力ある「ブンガク的工事現場」もおすすめ。