マジッド・マジディ

田舎のダチョウ牧場で働く男カリム。娘の補聴器が壊れて金が入用なときに誤ってダチョウを逃がしてしまい、仕事を首になる。補聴器を手に入れようとテヘランに向かった彼は、バイクタクシーと間違われたことをきっかけに都会で手っ取り早くもうけようとするのだが。家族を養うため背中に大きなものを負っている父の姿を描く。

子どもの頃に事故で視力を失った大学教授のユセフは、重病を患い、治療のためにフランスへ渡る。神に慈悲を乞う彼だが、右目の奥の腫瘍を取り去ったあと、奇跡的に視力が回復する。新しい世界に興奮する彼の目に映ったのは、妻や子どもではなく、若くて美しい女性だった。近くの幸せ、遠くの幸せの是非は難しい。

17歳の青年ラティフが働く建築現場に新しく雇われたアフガン難民労働者の少年。しかし、その少年には隠された秘密があった。見返りを求めない愛に感動する一方、そうならざるを得なかったアフガン難民の過酷な生活に心が痛んだ。

全寮制の盲学校に通う少年は、目は見えないが心で自然を感じる。彼の父親は再婚を前に、少年の行く末と自分の結婚を案じる。主人公は実生活でも盲学校に通う少年が演じた。

少年アリは妹の靴をうっかり失くしてしまうが、家が貧しいため両親に伝えることができない。賞品の靴を手に入れようと、アリはマラソン大会に出場することを決意する。貧しい家族の物語をあたたかく描いた作品。

少年メヘロラが出稼ぎ先から戻ると、母は警察官の男と再婚し、妹たちを連れて新しい家に移っていた。亡き父の代わりに家族を助けようと辛い仕事に耐えていた少年は、母に裏切られたと絶望する。義父は少年を受け入れようと努力するのだが、メヘロラは彼の銃を盗んで逃亡する。砂漠を舞台に繰り広げられる「父であること」を巡る葛藤が印象的。

少年と妹が村の学校で勉強していると、お父さんがやってきた。お母さんの病気は町の病院で手術をしないと治らないという。お父さんはお金を工面するため、町に出かけてしまった。残された少年は、「神に祈りなさい、必ず助けてくれる」というおばあさんの言葉を信じ、神様に手紙を書くことを思いつく。神とはなにかを素朴に描く小品。少年の瞳が美しい。

父を失い村を出た兄妹は、道で出会った男にだまされ、妹はパキスタンへ売られ、兄は砂漠の運び屋“バダック”として働くことになった。妹を助けようと思う兄ジャファルだが、彼の前には悪知恵の働く大人の壁があった。筋立てはシンプルだが生命力を感じる。マジッド・マジディの長編デビュー作。